今回は、他院で治療が困難ということで当院を受診された患者さんについて紹介したいと思います。
チワワ 10歳齢 避妊メス
元気・食欲にムラがあるとのことで他院を受診されました
超音波検査にて副腎腫瘤を認めたが治療困難とのことで、
精査希望で当院を受診されました
当院でも超音波検査を行ったところ左の副腎という臓器が
10mmほどに腫大していました(正常値は6mm程)
副腎はホルモンを分泌する臓器です。
ここが腫大しているということはホルモンを過剰に分泌し、
全身状態に影響を与えている可能性があります。
コルチゾールというホルモンの値を測定したところ
腫大した副腎の影響で
クッシング症候群という病気を起こしていることが分かりました。
この検査をACTH刺激試験と言います。
刺激前 10.2 ug/dl (正常値:1.0-6.0 ug/dl)
刺激後 30 ug/dl以上 (正常値:8.0-18.0 ug/dl)
腫瘤の精査、転移のチェックのためにCT検査を行いました。
赤い矢印が腫大した副腎です。
後大静脈、後大動脈、腎静脈の近くに
副腎が接していることがわかります。
↑クリックしていただくと腫瘤の3D画像が出てきます。
画面下の方にあるマメのような形をしたものが副腎腫瘤です。
手術適応と判断し手術を行いました。
(以下、手術の画像が出てきます。)
青丸の中心が腫大した副腎です。
特殊な器具を使用し、血管から腫瘤を剥離していきました。
手術は無事成功し、元気に退院してくれました。
摘出した副腎腫瘤
摘出した腫瘤は副腎皮質腺腫と診断されました。
副腎腫瘍の治療方法は外科的切除が第一選択です。
良性腫瘍である副腎腺腫はもちろん、
悪性腫瘍である副腎腺癌、褐色細胞腫
であっても外科的切除によって症状の改善、
生存期間の延長が望めます。
また内科治療の必要も無くなります。
今回の患者さんは取り切れているため予後は良好と考えられ、
今も元気に過ごしてくれています。
副腎腫瘍は早期発見、早期診断、綿密な術前術後計画が必要です。
今回は早期発見であったため無事、手術を終えることができたと思います。
特殊な技術、機材が必要な場合もできる限り対応していこうと思います。
また、当院で対応が難しく、
より専門的な技術、設備が必要な場合は
大学病院や専門施設への紹介を責任持って行います。
大きな手術でしたが、元気に退院する姿を見せてくれると
こっちが力をもらったような気がします。
ありがとうございました。
参考文献
犬の腫瘍
small animal clinical oncology 4th
副腎腫瘍の診断と治療 -最新の知見をもとに- 吉田、浅野ら著
文責 獣医師 村端