どうぶつのわ

肥満細胞腫のイヌの1例   (熊本 中央区)

この症例は腫瘍の中でも比較的遭遇することの多い

肥満細胞腫という腫瘍についてです。

 

 

 

症例
避妊メス パグ
高齢(年齢不明)
6.4kg
前胸部腫瘤の急速な増大を主訴に来院されました。

 

 

 

左胸部に拳大の腫瘤ができていました。

腫瘤は境界明瞭で可動性があり、

皮下から発生する腫瘤が疑われました。

(以降、手術の写真などが出てきます。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

診断や治療の方向性を決定するために細胞診を行いました。

 

小さな針を腫瘤に刺して細胞の検査を行ったところ、

肥満細胞腫という悪性腫瘍疑いでした。

FNA 肥満細胞腫

 

 

 

 

治療の方法としては

外科的切除、化学療法(抗がん剤)、放射線療法の3つがあります。

 

 

前胸部に大きな腫瘤を形成していましたので

まずは抗がん剤にて腫瘤の縮小を狙い、

十分に小さくなった後に外科的切除をおすすめしました。

 

 

 

肥満細胞腫術前

肥満細胞腫 切除後

写真1:手術前 術前の抗がん剤により腫瘤は縮小している

写真2:切除後 悪性腫瘍の可能性が高かったため、

腫瘤から2㎝の水平マージンと筋膜一枚の垂直マージンを切除している

 

 

 

 

病理結果は肥満細胞腫(Patnaik Ⅱ型、kiupel 低グレード)でした。

 

 

 

 

中程度の悪性度だったため術後も少量の抗がん剤を

内服しながら経過を見て、薬の量を減らしています。

 

 

 

 

 

基本的には腫瘤が良性なのか、悪性なのかは実際にそのものを

切除してみなければわかりません。

 

 

 

悪性だった場合はマージンと言って正常な組織も含めて切除する必要があります。

なぜなら悪性腫瘍の場合はカニの足の様に

腫瘍細胞が正常な組織の中に入って行っているからです。

 

 

カニの足を取り残すことによって腫瘍細胞が増えることにより、

再発がおきます。

 

そのため最初の手術でできる限り腫瘍細胞を切除しなければなりません。

 

カニの足は肉眼で判別することができないため、

正常だと考えられる部分も一緒に切除しなければなりません。

 

そのために術前に細胞診を行い、ある程度の予想をつけて

切除範囲の決定を行う必要があります。

 

 

 

今回の症例では細胞診を行い、

きちんとした術前計画を建てることによって取り残しを防ぐことができました。

 

 

 

 

高齢の子の体にはデキモノができることがあります。

「少し大きくなってきたなぁ」

ということがあればそのまま放置せずに一度、診察にいらしてください。

 

オーナーさんと相談の上、検査・治療を行っていきたいと思います。

 

 

 

 

 

獣医師 村端健臣

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